八国山を降りて、線路の向こう側の北山公園へ足を延ばす。
ここは、菖蒲を植えていて、6月になると見ごろになるそうだ。池や湿地がある広々とした公園で、向こう側に八国山がこんもりと見えるのが気持ち良い。
日帰りの旅も終盤。駅に向かいがてら、もう一度八国山の方へ向かうと、何やらサックスのような音が聞こえる。きっと誰かが練習しているのだろうと、音のする方へ近づいてみる。どうもジャズの曲のようだが、遠鳴りするテナーの音がしみじみと良い音色である。
どんな人が吹いているのだろうと興味しんしんで丘を登ると、演奏しているのは年配の紳士であった。キーボードの人も一緒に弾いている。
私たちは、近くの椅子に腰掛け、しばらく演奏を聴いていた。ゆるいビブラートと、力の抜けた演奏は、チンドンのベテラン楽士にも共通するものがあり、ただ者ではない感じ。「聖者の行進」など、味わい深かった。
後で話しかけると、昔大きなキャバレーで吹いていた楽士さんだった。しばらく演奏からは遠ざかっていたが、山にお花見に来る人相手に、最近また始めたそうだ。
キャバレーでは、八代亜紀やディックミネ、渡辺はま子や由美かおるのバックなどを務めた。連日大忙しで、練習するヒマなどなかったとか、由美かおるは踊るので曲が長く、譜面が譜面台から落ちて困ったとか、裏話が面白かった。
左の人が、テナーサックスを吹いていた。またお会いしたいものだ。