誰しも、多少は「オタク」的要素を持っていると思うのだが、私の場合それがあるのは、「劇伴」(=TVなどのテーマ音楽)である。子供の頃は、NHKのドラマの主題曲を空中録音していた輩のひとりだ。
成人してからは、その熱もだいぶ冷めたが、久々に劇伴への情熱をかきたてられている。
大河ドラマ「風林火山」のオープニングテーマが良い。千住明氏の作曲だが、かなりよく考えられて作られている。
簡単に分析してみる。
前奏 A B C C+ D A+ 後奏 という構成になっている。
A メインテーマ 馬が疾走する、勇壮でスピード感のあるイメージ A minor
B 美しくもはかない女性のイメージ A minor
C 飛躍する。開いていく。雄大。そんなイメージ A major
C+ Cと同じテーマ。さらに高く、飛行している。はばたく。 3度上のC major
D Cを下降形にしたようなテーマ。
危険、不安、恐れ、戦いに突き進んでいく運命 C minor (その中でどんどん転調)
A+ メインテーマ。 Aより3度上で。やはりそこへ戻って来た。 C minor
パッと聞くと、いくつかのパートが次々に出てくるのでメインテーマ以外の印象は薄いのだが、それぞれのパートは、音型、調ともに関連性を持っていて、自然につながっている。転調だって、最近のJ-POPにありがちな無理なものではなく、関係の深い調へ、
定石どおりの転調をしている。だから、聞いていて気持ちよく、否が応でも盛り上がる仕掛けになっている。
千住氏本人が、NHKのサイトで、「直球ど真中」と言っているけれど、その言葉どおり、意外なほど奇をてらったところのないベタベタの大河ドラマテーマ曲に燃えた(萌えた?)人は私だけではないだろう。